【北陸のICT活用⑤】利益アップが本来の狙い 逆にICTに使われていないか


 北陸地方整備局が今年度に発注したICT(情報通信技術)活用工事のうち、施工者の希望でICTを実際に導入した「ICT活用率」は75.0%で、全地整平均の47.3%を大きく上回る。施工者希望II型に限れば、全国31.8%の倍以上の73.1%に達している。未来への投資に対する積極姿勢とみることもできるが、「(ICTは)時代の流れ。パソコンだってそうだった」といった声が大勢を占めているようだ。乗り遅れないことが当面の目標(目的)となる。



・ICTはあくまで手段

 すでに数十件の情報化施工の実績を持ち、ICT土工施工国内第1号となった砂子組(北海道奈井江町)の真坂紀至ICT施工推進室長は、「ICTはあくまで手段。全体最適の視点で何のために使うのかを考え、余計なことまでICT化することはない」と指摘する。国土交通省のICT導入協議会委員長も務める建山和由立命館大教授は「ICTをうまく使えているか。実はICTに使われていないか。ICT導入は目的ではない。今後、さらに現場で技術開発の機運が高まることを期待したい」と話す。

 ソフトや機器への投資、人材の育成などを理由にICT導入に消極姿勢が目立っていた地域建設業界。活況を呈する首都圏との地域間格差が拡大していくのではとの不安感も新規投資に二の足を踏ませる。「安定的、計画的な公共事業」が担保されてこそ未来への投資が生きる。ICT施工経験者からも「建機にかかる費用が積算と実勢価格でかい離している」との声は少なくない。一方で「今はまだ生産性がどうのという段階ではない。ただ、個社としてはICT普及をにらんで今から差別化を考えていく」との将来戦略を描いている企業もある。

 北陸整備局の幹部は「いまは流れとしてできるだけ多くの企業がICTを実践してみてほしい。本来の狙いはその先にある。個々の企業がICTを自在に、柔軟に活用して競争の中で利益を上げていくというストーリー」と解説する。コスト縮減施策ではなく、競争環境を整えイノベーションを促して生産性を向上させ、結果として利益率を向上させるという図式だ。

・地域の守り手として

 昨年8月に開かれた経済産業相の諮問機関、産業構造審議会総会で坂根正弘臨時委員(コマツ相談役)は、日本の建設産業は世界でも特に生産性が低いと訴え、ICTを一気通貫で導入することの効果を強調。結果として「これだけ多くの企業数は存在できない」「いままでのようにみんなで生きていくことはできない」とも指摘した。

 山間部で直営の施工部隊を抱え、「地域の守り手」として町の活性化や防災を支えている企業経営者は、「なぜこれほどi-Construction(アイ・コンストラクション)を急ぐのか分からない」と明かす。“坂根発言"を反すうしながらいまもぎりぎりの人員で除雪に当たっている。地方部では、労務集約型の建設業にとって「省人化」を推し進める施策はベクトルが逆ではないかとの思いを否定できない。建設生産システムを効率化することが、ものづくりの基本である「人」や技能を生かしていくことと矛盾せず、さらには町の活力にもつながっていく方向を考えなければならないと考えている。

 課題を抱えながらも動き始めたICT活用。「何のために」変化に適応していくのか、根本的議論も欠かせない。
(おわり)

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