【挑戦! I-CONSTRUCTION40】イリノイ大学発のベンチャーがUAVの写真測量で橋梁点検


UAV(無人航空機)などを使った空中写真測量技術の進歩は速い。米国でも日本と同様に、インフラストックである橋梁の点検が課題になっているが、イリノイ大学アーバナーシャンペーン校の企業インキュベート施設で産声を上げたリコンストラクト(RECONSTRUCT)社(CEO、Mani Golparvar 同大土木環境工学科准教授)は、UAVと点群を使った新たな橋梁点検技術を開発・運用している。今回は「日本でも運用できる」(Mani CEO)というこの技術を取り上げてみたい。


米国でも点検には、点検車を使っている

 米国での橋梁点検の課題は、日本と同様でいくつかある。(1)高価で危険な作業が伴い、時間も要する(2)交通規制が必要で、点検計画が煩雑(3)診断結果がばらつく(4)発注者への費用負担が大きい--などだ。
 米国の橋梁点検は、橋梁上から人が乗ったバケットを下ろす橋梁点検車を使用するのが主流だ。
 ミネソタ州の例では、人口500万人に対し、現存する2万橋について2年ごとに点検を行っている。一方、日本の国土交通省は、全国70万橋のうち、2万橋を5年に1度点検する方針だ。

◇写真にひも付けし診断

点群生成に使用した写真がリンクされる

 リコンストラクト社は橋梁点検にUAVを導入して、写真測量技術で現状を点群化するとともに、高解像度の現状写真をひも付けて劣化状況を診断できるようにしている。
 実際の運用は、次のようになる。
 まず、データ収集では、UAVで点検対象となる橋梁周辺を飛行し、あらかじめ設定したラップ率で写真を撮影していく。
 同社の技術の特徴でもあるが、写真は静止画でも動画でも収集が可能だ。動画の場合は、フレームから写真を切り出して特徴点を比較し点群化する。
 写真の解析プロセッシングは、クラウドで行う。システムはGPS(全地球測位システム)の情報と衛星時間からイメージのローカライズを行い、点群を生成する。完成した点群モデルには、生成時に使用した写真がひも付けられており、両方で健全性を確認できる。
 完成した点群モデルを見ると、モデル周辺に撮影した写真のマークが、撮影角度や座標とともに表示されているので、細かい部分を点検する場合も、写真をズームアップして細かい部分が見られる。
 3次元点群データなので、部材の距離、角度、面積もあとから測ることができる。また蓄積されたデータは、時系列で比較可能なので、数回にわたる点検結果を比較し、経年変化による劣化状況も確認できる。
 自動でリポートも生成され、作成されたリポートは、セキュリティーの高いクラウドに保存、共有する。
 施設管理者は、場所による劣化傾向、原因の分析ができ、修繕工事の意志決定、維持管理の判断材料に活用できる。過去に取得した点検状況を活用して、3次元モデルで比較検討も可能だ。

◇コストの4割削減が目標

 同社の目標は、現状で1橋当たり3500ドル以上かかっているコストを、2000ドルと約6割まで低減させることだ。
 UAVによる点検の利点は、交通を止めることなく、点検員がアクセスできない場所を安全に検査が可能で、点検ルーチンが統一されているため点検内容が均質化する。
 また橋梁点検車に比べて安価で、橋の構造形式や発注者の違いに左右されず、単純な管理形態が構築できる。保存結果は、橋梁、地域、健全度ごとに分類でき、PCでもモバイル端末でも参照が可能になるという。

◇点検のワークフロー


 点検のワークフローは、同社のシステムと発注者、コンサルタントなどで構成されている。まず発注者が契約したコンサルタントが飛行・撮影ガイドラインに沿って、UAVを飛行させて点検対象の写真を撮影する。
 クラウド上にあるリコンストラクト社のシステムに写真をアップロードして自動点群処理を行い、点群による3次元モデルを生成、コンサルタントがシステム内で点検・検査を実施する。システムが点検レポートを作成するので、発注者と共有クラウドでデータ共有、オンラインで参照し、修繕計画や点検結果の保存を行う。
 このプロセスを2年から5年サイクルで実施するという流れになる。
 クラウドに保存されたデータは、ワードやPDFといった書類から点検結果にリンクを張れるため、参照が簡単に行える。写真をズームインして、部材の詳細な損傷を確認もできる。また点検のログと関連する帳票とひも付けられるという。

◇日本向けでもOK


 同社のシステムは現在、米国や中国で運用されているが、日本向けにも各種のカスタマイズが可能だという。
 具体的には、インターフェースやダッシュボードを日本語対応し、例えば国交省や自治体が要求する機能へとカスタマイズできる。
 また、現状はamazon(アマゾン)のサーバーにシステムを載せているが、セキュリティーの観点からすべてのシステムやデータを、日本国内のプライベートサーバーに構築することもできる。
 米国における写真測量技術は、大幅な進歩を遂げている。橋梁などの既存インフラの点検であれば、ICT(情報通信技術)対応型工事のようにミリ単位での3次元設計データが必要なわけでもない。

◇建築にも応用できる

 通過交通を止めたりせずに、UAVで写真を撮影するだけで必要なインフラ点検ができれば、費用、安全、期間を縮減しながら膨大な既存ストックの維持管理が可能になる。
 同社は、この技術を建築でのBIM(ビルディング・インフォメーション・モデリング)モデルと組み合わせて、工事進捗管理にも応用している。建設中のビルをUAVで撮影し、工期が遅れている部分を可視化したり、工程調整会議の材料として利用する。点群生成技術の進化は、応用次第で幅広く活用できる。

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