丁張なしで施工するモーターグレーダー


◇推進会議と戦略

 情報化施工の導入へ国土交通省が本格的に方策検討を始めたのは2008年2月。産学官の有識者による「情報化施工推進会議」を設立した。情報化施工の普及方策として、「情報化施工推進戦略」を5カ年ごとの2期にわたって発表している。
 情報化施工は、GNSSなどの衛星測位技術と、重機をコントロールする制御技術、トータルステーション(TS)などで出来形を管理する情報管理技術が融合した技術の総称。
 一方、昨年11月に国交省が導入を決め、省を挙げた取り組みとして展開している「i-Construction(アイ・コンストラクション)」は、この情報化施工に加えて、ドローン測量や設計、施工計画、検査など施工を中心として「ICT(情報通信技術)を全面活用」するとともに「コンクリート構造物などの規格を標準化」すること、年度末に偏っていた工事発注時期を、「年間通じて平準化」することの3本柱による建設産業の改革である。
 情報化施工推進戦略では、目標期間の12年度に活用工事が8倍まで増えた。国交省はその後、13年3月に新「情報化施工推進戦略」を発表し、4月から1万m3以上の土工を含む直轄工事でTSを使った出来形管理を標準化した。
 16年4月現在、国交省はアイ・コンストラクションによって、土木工事のすべてをICT活用施工対応工事とし、施工だけでなく調査・測量段階、設計、検査でも3次元データを使う15の新基準を導入した。工事金額の積算にもICT関連の必要経費を計上する新しい積算基準も導入した。



丁張の種類


◇従来施工との違い

 道路工事を例にすると、情報化施工と従来施工の違いが分かりやすい。道路は土工事と舗装工事などに分かれるが、土工事は測量、整地から始まる。工事基準点を設置し、それをもとに工事場所の高さや位置、形を示す法丁張、トンボ丁張、門型丁張を置いていく。これは工事の下書きのようなもので、重機などで土を動かす時の指標となる。
 重機オペレーターは、この丁張や水糸を基準に目的の高さまで土を盛ったり、切ったりする。ブルドーザーでの整地では、ダンプトラックが運んできた土をブルで均し、踏んで転圧し、層ごとに丁張を基準に高さを測るという工程を繰り返す。法面整形するバックホウでは、設計に従って法面の角度を示す法丁張を頼りに指示された勾配で法面をつくっていく。モーターグレーダーで行う仕上げ作業では、舗装ができるようにセンチ単位の施工精度で丁張どおりの高さで施工する。
 従来施工の重機オペレーターは、手元と呼ばれる補助作業者の指示で高さを調整したり、時には重機を降りて確認しながら施工している。
 一方、情報化施工の3次元マシンガイダンスという技術は、この丁張などの設計情報を重機に搭載して、ディスプレーや音で確認するだけで施工できるようにする。現場で測量して丁張を設置する手間がなくなるうえ、補助作業員がいなくてもバケットや排土板の位置が設計どおりの場所にあるか分かる。さらにマシンコントロールでは、バケットや排土板の油圧制御も自動で行うので、オペレーターの負担はさらに軽くなる。
 情報化施工導入のメリットは、重機操作が簡単になることによる熟練オペレーター不足解消、重機周りで補助員が作業しないという安全性向上、施工精度、施工効率の向上などがある。情報化施工は、これらの課題を解決できる技術だ。



 この連載執筆にあたり、担当する記者も重機の技能講習を受けることにした。千葉県市川市のコベルコ教習所市川教習センターで、「車両系建設機械(整地・運搬・積込み用及び掘削用)運転技能講習」を受講した。この資格で、ブルドーザーやモーターグレーダー、パワーショベルやバックホウ、ホイールローダーなどを操作できるようになる。

 2015年9月7日。東京都千代田区の日刊建設通信新聞社の本社で、「挑戦!情報化施工」と題した企画がスタートした。この企画は、情報化施工に携わる測量機器メーカー、GNSS(衛星測位システム)補正情報配信サービス会社、ICT(情報通信技術)建機メーカー、3次元データソフトウエアベンダー、ICT建機レンタル、実際の施工にあたる道路会社の計9社が協力し、総勢20人で、情報化施工の全技術を習得するものだ。



 日本建設機械施工協会(JCMA、辻靖三会長)は「i-Construction(アイ・コンストラクション)施工による生産性向上推進本部」を設置する。4月下旬に初会合を開く予定。アイ・コンストラクション施工技術について、技術を提供する立場、施工する立場から関係機関に提言するとともに、アイ・コンストラクション施工技術に対応できる人材育成や利用促進に向けた情報発信、広報活動などを実施していく。
 推進本部の下に、(1)i-Con普及ワーキング(WG)(2)ICT活用戦略WG(3)定量的評価WG(4)企画検討WG--を設ける。当面の対応として、国土交通省が2016年度から全面展開するICT(情報通信技術)土工に対応できる技術者、技能者の拡大のため、国交省と連携して講習会を開くとともに、建設施工現場の生産性向上への対応として、アイ・コンストラクション適用範囲を土工以外の工種や新たな技術にも広げるための提案・要請を国交省や関係機関に行っていく。本部長に鹿島の高田悦久氏、副本部長にコマツの四家千佳史氏が就任する予定だ。
 2016年を「生産性革命元年」と銘打ち、人口減少による労働供給の制約を打破する“生産性革命”の実現に踏み出した国土交通省。本格的な「i-Construction」(アイ・コンストラクション)への転換など、3月に計6つの取り組みを第1弾プロジェクトとして発表したのに続き、11日に開く第2回の『生産性革命本部』(本部長・石井啓一国交相)で第2弾となる新たなプロジェクトを打ち出す。
 8日の閣議後会見で石井国交相は第2弾プロジェクトの候補として7つの取り組みを紹介した。11日の会合で社会のベース、産業別、未来型の3つの切り口から第2弾の実行プロジェクトを選び出す方針だ。


建設通信新聞が主催した、「挑戦!! i-Construction 初心者でもできるか情報化施工」連載記事の予告動画です。

3次元マシンコントロールブルを使った実習(停車中)

建設通信新聞と、測量機器メーカー、建機レンタル、建機メーカー、衛星の補正情報提供-会社、ソフトウエアベンダーの9社で構成する混成チームで、現況測量からデータ作成、-基準点設置、情報化重機の設定、施工、出来型検査まで、すべての情報化施工をマスター-する企画です。4月から、紙面とウエブで連載開始します。