中村建設の現場で実際に計測した
 アカサカテック(横浜市金沢区、加瀬順一社長)は、アンドロイドスマートフォンに対応したクラウド型のGNSS測量システムを開発、販売している。製品は、アンドロイドアプリの「Smart-GPMate」と、クラウド型GNSS計測管理システム「regolith(レゴリス)」で構成されており、ネットワーク型RTK計測を誰でも簡単に高精度な計測が実現できる。今回は、中村建設(奈良市、中村光良社長)の協力を頂き、実際の現場で製品を使ってみた。

▽単純明快なシステム

 システムは、市販のGNSS2周波アンテナ・受信機とアンドロイド端末、計測ポールとクラウドシステムで構成されており、簡単に持ち運びが可能だ。現場で受信機の電源を入れて、端末とBluetoothで接続すれば、自動的に端末のインターネット経由で、ジェノバのVRSサーバから補正情報を取得して、数cm単位の高精度で現場に必要な3次元座標を取得できる。
 事前の準備としては、事務所のPCを使って、クラウドサービスのレゴリスで現場ごとにプロジェクトを作成、現場計画図などをDXF形式でアップロードし、工事基準点や杭の座標、測線などを登録しておく。この時に現場の平面直角座標系なども指定しておく。また端末にもDXF形式の現場図をコピーする。事前準備はこれだけだ。

▽現場で計測
 現場では、まずGNSS受信機の電源を入れて端末と接続ポールに取り付け、端末側でアプリを立ち上げ、アンテナ底面の高さをミリ単位で入力する。設定が完了すると計測画面が表示される。

端末の計測画面
中村建設の現場から、あらかじめDXF形式の計画図面を提供していただいたので、計測画面にはすでに現場の図面が表示されている。きちんと上空視界が開けていれば、計測画面上部に表示されているGNSS状況が「FLOAT」から「FIX」に変わり、VRSで位置が確定されていることがわかる。
 現場ではまず、逆打ち計測という機能を使って、測量で設置した工事基準点まで誘導させてみた。端末は現在位置から指定した基準までの離れと方向をリアルタイムで表示し、近づくにつれ距離レンジが小さくなって精密に基準点まで誘導した。
 次に、コンクリート打設が済んだ構造物の変化点を「一般計測」という機能で計測した。この機能は新点を測るもので、擁壁の変化点にポールを当てて計測ボタンを押すと、その3次元座標をクラウドに転送して記録する。実際に測ったところ、計画図どおりに施工されていることが確認できた。
 中村建設の職員の方に実際に使ってもらったところ「光波で測るよりも手軽で、土工などの自主管理などで使ってみたい」「衛星測位がこれほど簡単だとは思わなかった」などの感想を頂いた。
 GNSS計測システムは、実際に使ってみると便利さがよくわかる。皆さんの現場でもぜひ試していただきたい。
 今回使用した2周波のアンテナ受信機は百数十万円程度のものを使用した。アカサカテックでは近く、50万円程度の安価な1周波受信機を発売する予定で、こうした製品が普及すれば、多くの現場で手軽に衛星測量が使えるようになるだろう。
国土交通省では、ICT施工を地域の中小建設業や地方自治体へ普及拡大するため、導入支援や人材育成支援策を展開している。主な施策としては(1)小規模土工の実態を踏まえた積算の導入(2)地方整備局などによるサポートと3次元設計データ提供など(3)ICTに関する研修の充実(4)地方公共団体への支援--といった4本柱で進めている。今回は、施策の中でも特に力を入れている「現場支援型モデル事業」について取り上げてみたい。

◇事業の内容

 この事業は昨年度から行われており、2017年度以前に茨城県、静岡県でパイロット事業として着手、17年度は北海道を除く地方整備局でモデル事業に着手した。
 事業は、建設事業の大半を占める地方自治体工事にICT活用工事を広めるため、自治体発注工事を対象にモデル事業を行っている。国が「ICT施工の専門家」をモデル工事に派遣し、工程計画の立案支援、ICT建機稼働時の運用指導を行い、確実にICTのメリットを作り出す。
 今年度も全国の各地整から1件以上で実施する予定で、「1県に1件、年間10自治体のペースで行いたい」(本省公共事業企画調整課)という。実際に効果が出た現場を好事例として紹介し、横への展開を目指す。
 昨年度に実施した例としては、茨城県が事務局となり「いばらきICTモデル工事支援協議会」を設置、地元建設業を始め、設計コンサル、測量業、建設機械製造業、ICTメーカーが参加して、3次元設計データ作成講習会など、さまざまな取り組みを進めた。
モデル事業の概要

◇実際の事例

 昨年度の実例としては、3次元設計データを活用した工程計画の見直しとして、2万m3程度の土工現場で、大小さまざまな仮置き土が点在するなか、当初は丁張りに従って小規模ロットで仮置き土を掘削・移動して盛土を繰り返す計画だったが、MCブルドーザーを活用してロットを大きくし、広範囲に敷き均しを行った結果、工期が約60日から約40日に大幅に短縮できた。ICT活用でフロントローディングを実践できたという。
 宅地造成現場の例では、機材調達計画を精査した。切土(1500m3)、盛土(6500m3)の法面整形に、ICT建機と従来型建機を合わせて作業時間を短縮した。衛星測位ができるICT建機を丁張り代わりの目印設置に利用し、従来機がICT機の施工後の面を使って施工することで、高価なICT機の稼働率を向上させた。

▽現場全体を通した活用

 全国複数の現場でモデル工事を進めた昨年度だが、工程計画の見直し、ICT機材選定、建機の活用方法、ICT建機の極限活用などを通して、丁張りレスによる労務費の削減や3次元設計データ内製化による外注費削減、工期削減など、さまざまなメリットを生み出せることがわかった。
 国では、こうした支援型モデル事業のまとめとして、(1)1つの工程を高いICT建機に置き換えても、ボトルネックが移動するだけ(2)施工の全体最適への取り組みが最も重要で、ICT建機の能力を理解した上で、最初の準備段階でICT建機活用を前提とした工程計画にすることがメリットを極大化する--としている。
 国交省では今後も、最新のICT施工技術を導入しやすくするために、基準・制度を先取りして整備する方向だ。
(田中 一博)
2018年度から拡大されたICT工種に「ICT浚渫工(河川)」がある。この工種は昨年度に港湾で導入されたが、港湾では主にグラブ浚渫が使われている。今年度からの河川の浚渫工では、おもにバックホウ(BH)浚渫船をICT建機として考慮している。

◇従来の手法

 河川土工マニュアルによると、河川浚渫工は、グラブ浚渫船、ポンプ船、バックホウ浚渫船の3つに分けられており、その中でも、バックホウ浚渫船は、近年、河川における浚渫での施工事例が増えてきた。
 従来のバックホウ浚渫船による河川浚渫工事について見てみると、まず河床の現況把握のために事前に深浅測量をして、測量結果を基に施工計画を作成する。その後、浚渫船運転工、土運船運搬、揚土工を繰り返して河床を整形し、最後に出来形測量として再度、深浅測量を行っている。
 これまでの課題としては、掘削面が水面下にあって目視できないので、オペレータの熟練度によって出来形の正確さが変わってしまうことや、浚渫船の移動ごとに掘り残しの確認をスタッフなどでの人力計測が必要だった。

◇BH浚渫船のICT

 バックホウ浚渫船に搭載されている建機を3次元MG、MC化すると、これまでアームに線を書くなどして把握していた深さ管理が、手元のモニターで簡単に刃先位置を確認でき、熟練者でなくても正確な施工ができる。
 さらに3次元設計データを搭載すれば、掘削済みの部分は色分けで表示されるため、出来形や出来高の管理も簡単になる。

◇出来形管理基準も変更

 今年度からICT建機の利用を前提にした『施工履歴データを用いた出来形管理要領(河川浚渫工事編)(案)』の新設や、基準類の改訂が行われた。
 この新設・改訂は、従来の抽出検査から面管理(全数管理)を導入したことと、ICT建機のバケット軌跡で出来形管理し、完成検査を省略できるようにした点がポイントだ。
 面管理導入では、これまで20mごとの測線で5m間隔で行っていた抽出管理を、1㎡ごとに1点の密度で管理する。一見厳しくなったように見えるが、従来プラス20cmまでしか許容しなかった基準高を、面管理ではプラス40cmまで許容する(全体の平均値は基準高以下にする)。また幅と延長の規格値も省略した。加えて出来形管理の計測方法は、レッド測深に加えてマルチビームなどの音響探査でもできるようにした。面管理導入で、これまで測線外では分からなかった掘り残しがなくなる。
 出来形管理要領では、ICT建機で掘削時に取得したバケットの軌跡記録を取りだして、点群処理ソフトで最下点を抽出して出来形管理できるようにした。この管理により、完成検査(実地)の実測を省略する。ただデータ改ざん防止のために、1工事に1回程度立会での段階確認を行う。
 国交省は「管理手法は大きく変わるが、心配せずに履歴データを活用してほしい」としている。(田中 一博)

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